あなたの体の中には「星のかけら」が入っている!? オリオン座の巨大な星が今にも爆発しそうな件
「あなたの骨や血液は、大昔に爆発した星のリサイクル品です」——そう言われたら、ちょっとゾクッとしませんか。今回はそんな壮大な話と、今まさに「爆発秒読み」とも言われる巨大な星のお話です。

切れそうで切れない、天井の古い電球。ジジジ……と点滅しながらも「まだいけるよ」と粘り続ける電球の下で、脚立を持って「いつ交換すればいいんだ……」と困り顔で見上げる人。——実はこの電球、オリオン座に本当に浮かんでいます。
そもそも何が起きているの?
オリオン座で赤く輝く一等星「ベテルギウス」。太陽の約1000倍という途方もない大きさを持つこの星が、2019年頃に急激に暗くなり、天文ファンの間で「ついに爆発(超新星爆発)か!?」と大きな話題になりました。ところがその後、なぜか光を持ち直して安定してしまい、今もなお「いつ爆発してもおかしくない」状態のまま、粘り続けています。
そして、この「星の爆発」は単なる遠い宇宙の出来事ではありません。実は私たちの体を作っている元素そのものが、大昔に起きた星の爆発から生まれたものだからです。
このスケールの大きい話、文章だけではもったいないです。ぜひポッドキャストの音声で、その驚きごと味わってみてください。
ここから先は、もっと知りたい方向けの深掘りタイムです。気になるところだけパチパチっと開いて読んでみてください。
① 平安時代、日本人は「もう一つの太陽」を見ていた
平安時代の歌人・藤原定家が残した日記『明月記』には、突然夜空に現れた「客星」の記録が残されています。その正体は、はるか遠くにあった星が最後に迎えた大爆発、いわゆる超新星爆発でした。当時の記録によれば、その星は昼間でもハッキリ見えるほど明るく輝き、まるで空に太陽が2つあるかのような大ニュースだったといいます。
この爆発の残骸は、現在「カニ星雲」と呼ばれ、天体望遠鏡を通じて今も観測することができます。千年近く前の人々が肉眼で目撃した大事件の跡が、今も宇宙に浮かんでいるというのは、なんともロマンがある話です。
② 「切れそうで切れない電球」ベテルギウスの正体
ベテルギウスは、太陽の約1000倍という規格外のサイズを持つ星です。仮に太陽の位置にベテルギウスを置いたとしたら、その巨大さは木星の軌道まで丸呑みしてしまうほど。
2019年頃、この星が急激に暗くなったことで「いよいよ爆発か」と世界中の天文ファンがザワつきました。しかし、その後なぜか急に光を持ち直し、今のところ安定した状態が続いています。まるで、切れそうで切れない家の電球のような粘りっぷりです。いつ本当に爆発してもおかしくない星ではありますが、それが明日なのか、何万年も先なのかは、今の科学でもまだ正確にはわかっていません。
③ 私たちの体は「星くずのリサイクル品」
星が超新星爆発を起こすと、その瞬間に発生する凄まじい熱と圧力によって、酸素やカルシウム、鉄といった新しい元素が生み出され、宇宙空間に一気にばらまかれます。
そして驚くべきことに、私たちが暮らす地球や、人間の体を構成している原子の数々も、元をたどれば大昔に星が爆発したときに生まれた「星くずのリサイクル品」なのです。骨の中のカルシウムも、血液に含まれる鉄分も、はるか昔にどこかの星が最後に放った「置き土産」というわけです。
④ 岐阜の地下1000mで宇宙の謎に挑む「SKGD」
岐阜県の地下1000mには、「スーパーカミオカンデ」という巨大な観測装置があります。50mプールほどの大きさの水槽に満たされているのは、不純物が50mプールに鼻くそ1個分しかないという驚異的な超純水です。
2020年、この装置はレア元素「ガドリニウム」を水に混ぜ込む大改造を行い、「SKGD」という新しい姿に進化しました。この改造によって、星の爆発の瞬間に放出される「反ニュートリノ」という特殊な粒子を、世界最高精度でキャッチできるようになったのです。ベテルギウスのような星が実際に爆発したとき、その最初の知らせをキャッチするのは、光ではなくこの反ニュートリノかもしれません。
⑤ ダイヤルアップ回線 vs 光回線? ニュートリノの爆速デリバリー
太陽の中心で生まれた「光」は、太陽内部のドロドロのプラズマに何度も邪魔されながら進むため、表面にたどり着くまでになんと約17万年もかかると言われています。例えるなら、超のんびりなダイヤルアップ回線のような速度です。
ところが、光と同時に生まれる素粒子「ニュートリノ」は話が別です。あらゆる物質をすり抜けてしまう性質を持っているため、太陽の中心から地球までをわずか8分で直行してしまいます。まさに爆速の光回線。このニュートリノのおかげで、科学者たちは太陽の「今この瞬間のリアルタイムな健康状態」を診断することができるのです。
もっと知りたくなった方へ
今回ご紹介したニュートリノ観測の最前線については、東京大学宇宙線研究所「スーパーカミオカンデ」の公式サイトで詳しく知ることができます。地下1000mで宇宙の謎に挑む研究者たちの姿、興味のある方はぜひ覗いてみてください。
平安時代の人々が見上げた夜空の大事件から、地下1000mの超純水プールでの最先端研究まで。何百年、何千年という時間をまたいで、人類はずっと星の最後を見つめ続けてきたんですね。そう考えると、今夜見上げる星空も、少し違って見えてくるかもしれません。
それでは、また次回のもっと知りたいでお会いしましょう。
▼前回の記事
第13回:ナウカの暴走